ストーマ基礎知識編 

     基礎知識編

1.消化器全体概念図
  ストーマ(=Stoma)とは、ギリシャ語で「乳頭状に突き出した口」という意味を持ち、排泄物(尿 や便)が体外に出るように手術的に造られた排泄口のことを言います。
ストーマは粘膜で作られた腸や尿管そのものが腹壁に出されており、常に粘液を分泌し柔らかくて傷つきやすいものです。
肛門の持つ括約筋や神経もありませんので、排便や排尿を自分でコントロールすることはできませんが、食生活や日常生活をコントロールし、自分に合った排泄方法を見つけることで、排便や排尿をある程度コントロールでき、今までと殆ど変わらない日常生活を送ることができるようになります。 この章では、ストーマを持つ患者が効果的なストーマケアをする為に知っておくと良い基礎知識について説明します。
人体図 【補足説明】
食べ物は、胃で液状に溶かされたあと小腸(約6〜7mの長さ)で大部分の栄養素が吸収され、大腸(約2mの長さ)を経て排泄されます。
胃で3〜4時間かけて消化され、小腸から大腸への到達は4〜6時間かかり、肛門から排泄されるまでは40時間位かかると言われています。
大腸は、水分と電解質(ナトリウム、カリウム)の吸収及び不要物が便として貯められる役割を担います。


2.ストーマの種類
 ストーマは、大別して「消化器系ストーマ(結腸ストーマ、回腸ストーマ)」と「尿路系ストーマ」の二種類があり、それぞれ場所によってストーマの名称が異なります。
  このマニュアルでは以下消化器系ストーマ(結腸ストーマ、回腸ストーマ)に焦点をあて
  て説明します。
消化器系ストーマのいろいろ  
    ◇ストーマ写真(下行結腸ストーマの場合)
ストーマ正面写真 ストーマ側面写真
下行結腸ストーマ正面写真
(面板のあとが付いています)
下行結腸ストーマ側面写真
◇結腸ストーマの種類(Colostomy=コロストミー)
1)上行結腸ストーマ(Ascending Colon) 便はおかゆ状
2)横行結腸ストーマ(Transvers Colon、永久的ストーマと一時的ストーマがあります) 便はおかゆ状
3)下行結腸ストーマ(Descending Colon、永久的ストーマと一時的ストーマがあります) 軟便か固形
4)S状結腸ストーマ(Sigmoid Colon 固形便
上行結腸ストーマ 横行結腸ストーマ 一時的横行結腸ストーマ
1)上行結腸ストーマ
2)横行結腸ストーマ 一時的横行結腸ストーマ
下行結腸ストーマ 一時的下行結腸ストーマ
3)下行結腸ストーマ 一時的下行結腸ストーマ 4)S状結腸ストーマ
回腸ストーマ
◇回腸ストーマ(Ileostomy=イレオストミー)堰ィ便は液状

      ※オレンジ色の部分は切除する部分で、白い部分は残す部分です。
      ※赤丸印は腹部へ出すストーマ部分で、形状は人の顔と同様に千差万別です。
      ※援は体のどちら側にストーマが付くかを表しています。(自分を中心に奄現します)
      ※一時的ストーマとは、肛門を残しておき一時的にストーマをつくる手術で、一定期間
        の後ストーマを閉鎖しもとの肛門につなぎかえる手術の方法です。

3.治療後に発生しやすい機能障害について

 どのような治療(内視鏡、外科、放射線、化学療法等)を行うか、また手術であれば病巣の進行度合いや切除する部位や、どこまで切除するかによって治療後に機能障害が発生するかどうかかが決まります。
また、一口に機能障害と言ってもあきらめる必要はなく、神経温存手術や手術後のいろいろな治療及び手術に頼らない対処法等々が用意されていますので、主治医とよく相談しましょう。   
一般的に、大腸・人工肛門手術後に発生しやすいと言われている機能障害としては下記のようなものがあげられます。
    ◇排便機能障害...下痢便、軟便、便秘、頻便、便失禁、腸閉塞 等
    ◇排尿機能障害...尿意がない、自己排尿ができない 等   
    ◇性機能障害.....射精、勃起機能障害、精力減退 等

4.ストーマの種類別排便方法
(1)排便方法大別    
      
術後4〜5ヶ月間は排便状態(回数、便の状態)が不安定ですが、半年〜1年位経つ
   と便の状態や回数も落ち着いてきます。排便方法は大別して下記の排便(尿)方法が
   あります。
◇自然排便法 時間や自分の意志に関係なく自然に排便する方法です。
◇灌注(かんちゅう)排便法 洗腸による灌注(かんちゅう)排便方法(イリゲーション)で装具が必要となります。(ぬるま湯を腸内に注入し、腸内の便を強制的に洗い流すことを言います。詳細は実際編の「洗腸について」を参照)。 個人差や食べ物によって変わってきますが、通常1〜2日に一回の洗腸で24〜48時間はガスや排便の心配が少なくなります。
◇カテーテル排尿 尿路系ストーマの場合のみで、カテーテル(尿を出す為の細い導尿管)を挿入して尿を排出する方法です。
(2)ストーマの種類による可能な排便処理方法
ストーマの名称 排便方法
自然排便 灌注(かんちゅう)排便 (=洗腸)
 上行結腸ストーマ ×
 横行結腸1ストーマ ×
 下行結腸ストーマ
 S状結腸ストーマ
 回腸ストーマ ×

5.排便に使用する装具について 
 病院内の医療用品売店及び介護用品専門店等で、ご自分のストーマの形状や皮膚の状態に合った数多くのストーマ用装具を入手することが出来ます。
(普通の薬局では販売していないケースが殆どですので注意が必要です。)
皮膚保護剤が肌に合わなくて皮膚トラブルを起こす場合がありますので、
決定する前にいろいろなメーカーのものを試してみることをお薦めします。

以下各種ある装具や補助用品の中のほんの一部を例にとって装具のご紹介をします。

(1)面板とストーマ袋

     面板とは、体に貼り付ける皮膚保護剤付きのシートのことで、ストーマ袋は排泄物を溜
  める袋の ことを言います。
  面板には、ストーマの大きさに合わせて穴の大きさを自分で調整できるものと、 あらかじ
  め各種サイズの穴が開いているタイプとがあります。また便を溜める袋のことをストーマ
  袋と言います。
  ストーマ袋のカラーはメーカーにもよりますが、一般的には目立たない肌色と便の状態
  が観察できる透明タイプの二種類があります。
   各装具メーカーのカタログ等では、面板のことをフランジとかプレートまたはベースと表
  現し、ストーマ袋のことをパ ウチと表現しているところもありますがここでは「面板」「スト
  ーマ袋
」の呼称に統一しています。

    ◇フランジ(or プレート)=面版
    ◇パウチ=ストーマ袋

 

         次に装具の大まかな種類について説明します。 

◆単品型.....面板とストーマ袋が一体になった型でワンピースタイプとも言います。
単品型ストーマ袋  【特徴】
 ・ストーマ袋を直接貼るだけなので取り扱いが簡単。
 ・面板に柔軟性があるので皮膚になじみやすい。
 ・安価。
 ・面板とストーマ袋がはずれない。
 ドレインタイプ  クローズドタイプ 
◆二品型.....面板とストーマ袋が別々になった形でツーピースタイプとも言います。
二品型ストーマ袋オープンタイプ 【特徴】
 ・排泄物の処理がし易い。
 ・ガス抜きが簡単(接合部からガス抜きが可能)。
 ・面板を貼ったままでストーマ袋のみの交換が出来る。
 ・面板とストーマ袋の接合部がはずれる可能性がある。
 ・面板が単品型に比べて硬い。
 ・時と場合に応じて付属品の交換、取り付けが出来る。
   ◇入浴用キャップの取り付け
   ◇洗腸用ドレインの取り付け 他
オープンタイプ
二品型ストーマ袋クローズドタイプ
クローズドタイプ

(2)洗腸用具

   洗腸は全てのストーマ保有者が出来る方法ではありませんので、洗腸をする際は必ず
   事前に主治医に相談し許可を得た上で実施して下さい。
洗腸キット  【装具の説明(二品型=ツーピースの場合)】
  @洗腸液バッグ→お湯を入れて使用します。
  Aストッパー→ストーマにお湯を導入します。
  B洗腸ドレイン→洗腸で強制排泄される便を
    溜めたり排出する為の袋。
  C湯量調節弁→湯量を調節します。
  D湯量スピード監視計→湯量やスピードを監
    視します。

(3)その他アクセサリー
   各メーカーからいろいろな種類のアクセサリーが数多く準備されていますので購入前
   に販売店に相談したり、カタログを読んで特徴を把握しておくと良いでしょう。 以下、
   代表的なもののみ参考としてあげてみました。       
入浴用キャップ 消臭ガス抜きパット
入浴用キャップ 装具固定ベルト 消臭ガス抜きフィルター
(ツーピース用) (装具の密着性を高める) (ストーマ袋に貼って使用)

ミニストーマ袋=動きやすさと装着違和感を無くした小型ストーマ袋、入浴用もあります。
・面板穴開け用ハサミ=穴開けが容易にできるようカーブのあるハサミ。
実際編の写真
 参照。
・剥離剤=面板を容易に剥がす為の薬剤。
・皮膚保護剤=肌荒れや肌のトラブルを防ぎます。板状、棒状、液状、粉状等と各種あり
 ます。
・パウダー=皮膚保護用のパウダー。
・特殊ストーマ矯正パテ=ストーマの陥没箇所等を補正し、排泄物から皮膚を保護する
 パテ。
・ペースト=装具の密着性を高める為のペースト。
・消臭剤=ストーマ袋内に入れて使用します。

(4)装具選択のポイント(二品型=ツーピースの場合)  
   ◆面板(=体に張り付ける方の皮膚保護剤付きの装具を言います。)
      @ストーマの形状(陥没型、平坦型、たるみ型 等々)に合う面板かどうか。
      A皮膚保護剤が自分の肌に合うかどうか。
      B耐久性(皮膚保護剤や接合部の強度)や長期使用(交換時期)が可能かど
        うか。
      C装着や排泄物の処理が簡単かどうか。
      D入浴が可能かどうか。
      E衣服の上から目立たないもの(薄型)かどうか。
      F洗腸や入浴の際に目的の装具が取り付けられるかどうか。

    ◆ストーマ袋(=便を貯める袋を言います。
      @消臭効果が完璧かどうか。
      A耐久性(破れたり漏れたり等)があるかどうか。
      B排泄処理が簡単で衛生的にできるかどうか。
      Cガサガサ音がせず肌に優しいかどうか。
      D入浴が可能かどうか。 


  

  ・皮膚保護剤がついている面板は長期保存ができない為、販売店でも在庫数が限られ
   ています。
  ・注文の際は、保有数をよく管理し、メーカーに注文して入荷するまでの日数を計算に
   入れて余裕をもって注文するようにしましょう。(管理の工夫は
実際編のAdviceをご
   参照下さい。)
  ・自宅での長期保存は皮膚保護剤が変質する恐れがあります。(保存環境にもよります
   が、最大3〜4ヶ月を目安にしましょう。)
   また、高温(低温)多湿や直射日光のあたる場所での保管は接着剤が劣化するので
   不適当です。


6.いろいろな形のストーマ
(1)陥没型ストーマ  
陥没型ストーマイラスト 腹壁の中にストーマが陥没した形です。
体重の増加等で腹部に肉が付きすぎた為、ストーマが皮膚面より陥
没してしまった形のものです。
装具を貼ってもすぐ外れたり、便漏れや皮膚障害の原因となり
ます。
(2)ストーマ脱出                                     
脱出型ストーマイラスト トーマが飛び出してしまった形のもので10pを越えるような大きな
ものまであります。
飛び出しの度合いにもよりますが、日常生活に支障がなければ問
題はありません。
装具が装着出来なくなってしまったような重度の場合はストーマを造
り直さなければならない場合もありますので、主治医の診断が必要
です。
(3)ヘルニア                                       
ヘルニアストーマ ストーマの周囲が異常に盛り上がった形となり、このような場合に真
っ先に疑わなければならないのはヘルニアです。
これはストーマ周囲の皮下に腸が腹筋を越えて溜まってしまった状
態で、腹筋が弱くなった高齢者や手術後何年も経過した場合に発
生しやすくなります。
手術が必要な場合もありますので、主治医の診断が必要です。
(4)皮膚のシワに隠れたストーマ
シワに隠れたストーマ 年齢とともに体型が変化した場合や極端に体重を減らした場合、腹
部に出来たシワやクボミにストーマが隠れてしまう現象です。
(5)ストーマにポリープができる            
ポリープができたストーマ ストーマが面板の角でこすられて慢性的な炎症ができ、それがポリ
ープとなることがあります。良性のものか悪性のものかで治療方法
が変わってきますので、主治医の診断が必要です。
(6)ストーマ狭窄                            
狭窄型ストーマ ストーマの口が細くなってしまい、ひどくなると詰まって便が出なく
なり、腹痛や嘔吐が始まる場合があります。
主治医の診断が必要です。

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あとがき

          ストーマ基礎知識編